【Case Short Film + Pure Transparency】

Goal
僕の撮影コンセプトは、
「日常に溶け込むクリエイティブ」。
特別な場所で特別に見せるための表現ではなく、
その人の生活の中に自然に存在している状態を記録することを軸にしている。
SNSでは、変化を強調するビフォーアフター形式が一つの型として定着している。
それは視覚的にもわかりやすく、完成度の高い表現だと思う。
ただ、自分が向き合いたいのは「変化の瞬間」ではなく、
完成したヘアがその人の時間や空気にどう馴染んでいるか、という視点だった。
ロケーションや光、過ごしている瞬間まで含めて設計することで、
ヘア単体を主張させるのではなく、
その人の生活の一部として自然に機能している状態を表現する。
クリエイティブであることと、日常であることは、
本来は対極ではないのかもしれない。
日常の中にあるからこそ、本当の意味での完成だと考えている。
CREDITS
• Model: AOI
• Features: High-tone Long Hair / Radiant Skin / Cinematic Presence
• Director / Edit: Tassy
Gear
• Camera: Sony FX3
• Setting: Cine EI Mode (S-Log3) / Base ISO 800 & 12800
• Lens: Sony FE 24-70mm F2.8 GM II
• Filter: Kani Variable ND Filter
• Post-Production:
• Software: DaVinci Resolve
• Process: CST (Color Space Transform) ➔ Awakening Green LUT
• Location: Local Cafe in Tottori (Permitted)

検討した選択肢について
【Material Analysis:素材の解剖】
Model「AOI」を構成する最大の武器は、
光を透かすHigh-tone Hairと、
圧倒的なSkin Quality。
この素材をどう料理するかが、
今回のCreativeの出発点でした。
【Crossroads:エモさを生むギャップの計算】
Design段階では、2つの方向性を検討しました。
1. Vivid & Energetic: ハイトーンを活かした「バチバチのギャル系」表現。
2. Quiet & Cinematic: あえて静寂の中に置く「情緒的な」表現。
【Director’s Decision】
選んだのは**後者(Cinematic)です。
ハイトーンという「動」の要素を、雨の日の
Cafeという「静」の空間に閉じ込める。
この外見のインパクトと、
映像が持つ静けさの「ギャップ」こそが、
観る者の心に深く刺さる
「エモさ」の正体だと定義しました。
Tactics|技術の戦術
Phase 1 : Shooting Logic|撮影のロジック
1. Movement:あえて「手持ち」を選ぶ理由
今回はジンバル(スタビライザー)を使いません。
• Setting: 手持ち撮影 + FX3の手ぶれ補正(Active Mode)
• Why: ジンバルの滑らかさは美しさですが、
今回は「ロボットのような完璧さ」よりも、
**「人の呼吸感」や「その場にいる臨場感」**
が欲しかったからです。
微かな揺れが、映像に体温を与えます。
2. Time Manipulation:時間の流れを操る
• Setting: 60fpsで撮影 ➔ 30fpsのタイムラインで書き出し
• Why: 編集時に50%のスローモーションになります。
髪がなびく一瞬や、ふとした瞬き。
現実よりもほんの少しだけ遅い時間の
流れを作ることで、
日常のカフェを
**「非日常の空間」**へと変えます。

Tactics|技術の戦術
Phase 2 : Grading Recipe|色の調理法
撮影素材(S-Log3)は、まだ「生の食材」です。
ここからDaVinci Resolveを使って、意図した世界観へと調理します。
Step 1. Normalization(CST)
まずは「Color Space Transform」を使用し、
S-Log3(眠たい映像)を正しい色空間(Rec.709)へ変換します。
これが全てのベースです。
Step 2. Balance(Primary Wheels)
カラーホイールを使い、コントラストを整えます。
• Lift(暗部): 完全に潰れないギリギリまで下げ、画面を引き締める。
• Gain(明部): 白飛びしない範囲で持ち上げ、輝きを作る。
ここで「光の芯」を作っておくのが重要です。
Step 3. Look(LUT application)
世界観を決定づけるLUT「Awakening Green」を適用します。
• Key Point: 100%で当てると強すぎます。
あえて**「薄く(Gain 0.5〜0.7程度)」**ブレンドし、元の素材の良さを残しつつ、
雨の日に合うグリーン/シアンのニュアンスを纏わせます。
Step 4. Skin Isolation(Qualifier)
ここが最重要工程です。LUTの影響で肌も青ざめてしまうため、
「クオリファイア(スポイトツール)」で肌の色域だけを抽出します。
• Technique: 肌のみを選択し、少しだけ暖色(オレンジ寄り)に戻す。
• Goal: 背景は冷たくシネマティックに、肌だけはヘルシーに。
この「色のコントラスト」が、彼女の存在感を浮き立たせます。

Tactics|技術の戦術
Phase 3 : Strategy|思考の戦略
Material Analysis:素材の解剖
Model「AOI」の武器である
「High-tone Hair」と「Radiant Skin」。
これらを活かすため、以下の2つの決断をしました。
1. Concept:雨を「天然のフィルター」にする
鳥取の冬の雨を悪条件とは捉えません。
雨特有の「湿度」や「青白く沈んだ光」は、
彼女の透明感と、
狙った「静けさ」を
引き立てる最高の天然フィルターになります。
2. Director’s Decision:静と動の融合
ハイトーンという「動」の要素を、雨の日の
Cafeという
「静」の空間に閉じ込める。
この外見のインパクトと、
映像が持つ静けさの**「ギャップ」**こそが、
観る者の心に深く刺さる「エモさ」の正体だと定義しました。

Instructor’s Message
「なぜその設定にするのか?」
「なぜその色にするのか?」
すべての選択には理由があります。
感覚をロジックで裏付けすることで、
あなたの映像はもっと自由になります。
Hair Crest Academy
Camera / Movie Instructor
多城 勇輝